2015年07月15日
こんにちは。
社会保険労務士中井事務所の中井です。
今日は、賃金と債務の相殺について書きますね。
労働者の会社に対する債務を賃金で相殺する、
というのは会社業務においては日常的にあることかと思います。
しかし、これは意外とデリケートな問題です。
というのは労働基準法で賃金全額払いの原則が定められているからです。
社会保険等の支払いに生じる金額以外のものについては、現金で全額支払うことが義務付けられていますので、本人の同意なく相殺することは出来ません。
では、日常業務において一番よくある賃金を払いすぎていた場合の相殺は可能なのでしょうか。
残業代の計算を間違えたとか、なくなった手当をそのまま支給してしまったとか、社会保険の等級変更を間違えたとか、
よく起こるミスですよね。
これについては、認められています。
行政通達で「前月分の過払い賃金を翌月分で精算する程度は、賃金それ自体の計算に関するものであるから、法第24条の違反とは認められない」とされているからです。
では、翌月以降に間違いに気づいて相殺したいという場合はどうでしょうか。
こちらについては、判断が必要になります。
労基法24条但し書きに「労使協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる」との定めがあることから、労使協定を締結しておくとよいでしょう。
また、「労働者の経済的安定をおびやかさないこと」も必要になります。
金額の大きな相殺はやはり問題になる可能性があるでしょう。
いずれにしても、トラブルを未然に防ぐためには労働者にきちんと説明して同意を得ておくことをお勧めします。